塔 和子 詩集 NO.3
「手の上にのせて」
つがいの鳥のように
すっかりなれきった二人の暮らし
そこにいると
水もくれます 餌もくれます
そして着るものも
籠の中は日々平安
ときどき
神様のようなものが
すべてを与えられている私達を
手の上にのせて
おまえ達はいいなーと言って
遊んでくれます
けれども
籠の中にあんまりながくいると
外へ出ても生きるすべを忘れてしまい
また自分で籠の中へもどってしまう
目をあけると死にたいほどきびしいのに
そこは
目をつむって明るく生きるしかないところ
だから私は
いつもおもちゃの鳥のようにおとなしく
籠の中で暮らしている
「涙」
あるとき
死のうと思った私が夫に
「一生懸命なのよ」というと
夫は
「同じ一生懸命になるのなら
生きることに一生懸命になってくれ
がむしゃらに生きようではないか」と
言ってくれた
私は目が覚めたように
そうだと思った
どんなに一生懸命に生きたとしても
永遠に続いている時間の中の
一瞬を
闇から浮かび上がって
姿あらしめられているだけだ
いのち
この愛けないもの
思いっきり我が身を抱きしめると
きゅっと
涙が
にじみ出た
|
|