製作意図 |
学ぶこと、それは障がいの有無にかかわらずすべての人に与えられた権利です。しかし、特別支援学校に通う知的障がいや自閉症などの障がいのある人たちの高等部卒業後の進路は、社会に出て就職をするか地域の作業所で働くかの二者択一が一般的で、「進学」という選択肢は準備されていません。
青年期という大切な人生の一時期に「学び」を保障することは、自分らしく生きる力を培うためにも、自立した生活を送るためにも、今急務のニーズになっています。
この映像は、福岡市東区にスタートした福祉型専攻科、カレッジ福岡の1年にわたる実践の中から、青年期の学びの意義と障がいのある人たちの「学びの場」の重要性について考えていただき、学びの場の普及を願って製作されました。 |
作品内容 |
・カレッジ福岡には障害のある人たちの「学びの作業所」普通科と生活技能科に25名の青年たちが学んでいる
・現在、特別支援学校に専攻科が設けられているのは全国で9校。そのうち公立校は1校があるだけである。こうした中で、もっと学びたい、多様な学びの場が欲しいとの願いに答えて、福祉サイドからの学びの場の提供が全国に広がりつつある。カレッジ福岡も社会福祉法人設立の学びの作業所として2012年4月にスタートした。学業年限は4年。障害者総合支援法の自立訓練事業、就労移行支援事業の一環として行われている。
・カレッジ福岡の普通科の教科は一般教養、生活、ヘルスケア、経済、芸術文化、労働、スポーツ、自主ゼミ、資格検定、調理など。それらを学ぶことで、より充実した青年期を送ることが目標である。
・知的障がいや自閉症など精神発達に比較的重い遅れのある青年たちが学ぶ生活技能科では、身の回りにある身近な教材を使ってワクワク、ドキドキするような楽しい授業内容で、買い物や調理を含めて、生活に関連する様々なことを学んでいる。
・現在生活技能科1年生のY君は、高等部卒業後作業所に通っていたが、作業所の環境になじめず通所拒否から閉じこもりの状態が続いていた。しかし、この4月にカレッジに入学してからは毎日元気に意欲的に通うようになっただけではなく、仲間同士の励ましの中で、これまでになく行動にも積極性が出てきた。
・中学卒業後、そのままカレッジに入学したFさんは、将来、画家になることを目指しているが、カレッジの学びはそのための力を育てる場になっていると母親はいう。
・普通科の学生が真剣に取り組んでいるのは、資格・検定の授業。
入学当初はキーボードの操作もゆっくりだったが、今ではみんなパソコン検定4級、3級を目指して頑張っている。
・カレッジ福岡の学生たちの多くは、近くにあるグループホームで暮らしている。親元を離れ、より自立した生活が送れるようになるのも大切な目標。障害のある青年たちはともすると、自分に自信が持てなく自尊心感情が育ちにくいといわれている。しかし、カレッジ福岡の学生たちは毎日の学びを通して、悩み、将来への夢や希望を大切に育てている。 |
推薦の言葉 |
全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会 会長
愛知県立大学名誉教授 田中良三 |
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社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会では「カレッジ福岡」における取り組みを通して、障がい児の保護者はじめ広く関係者の皆さんにぜひ青年期の学びの大切さを知っていただきたいという熱い思いを込めてこの映画を製作されました。
開設して間もない取り組みを記録したものですが、ここには、若者中心に考えられた多彩な教育内容と若く溌刺とした教師たちによる授業づくりを通して、仲間とともに学び合い、障がいをもつ青年一人ひとりが生き生きと輝く姿が画面いっぱいに溢れています。
「カレッジ福岡」のように福祉分野において、専ら学び活動を事業とする取り組みは、近年急速に増えてきています。それは、学校教育にかぎらず福祉事業においても、人間としての成長と自立の土台を育む学びを取り入れることは必要欠くべからざるものであり、ゆっくり時間をかけて取り組んでいかねばならないことが認識されはじめたからです。
九州で初めて“福祉型専攻科”を拓いた「カレッジ福岡」が新しい学びに挑戦する姿を一人でも多くの人に観ていただくことによって、これからの「障がい者権利条約時代」を創る教育年限延長としての専攻科はじめ生涯にわたる学び支援の輪がさらに大きく広がっていくことを期待しています。 |