ここは瀬戸内海の小さな島。周囲約8キロの島にあるハンセン病の療養所で、今日、また一人の入所者が亡くなった。享年94歳の女性である。かつてハンセン病の療養所にはどこにも火葬場と納骨堂があり、遺体は入所者たちの手で荼毘に付された。そして今日なお、多くの遺骨は故郷の土地に帰ることを許されず、療養所の納骨堂に眠っている。
ハンセン病は『らい菌』による感染症の病気だが、感染力は弱く発病率は更に低い。だが、『らい菌』による末梢神経の麻痺のため顔や手足に後遺症が現れるため、昔から恐ろしい病気として忌み嫌われてきた。そして、ハンセン病に罹患した人は法律の下に、大人でも子どもでも、強制的に療養所に隔離収容されたのである。
|
写真:塔和子さん |